これまで方法を変えて2度の採卵に挑んだ私でしたが、どちらもうまくいきませんでした。そして自分に合う誘発方法を模索することになりました。3度目となる採卵は、ゆるい誘発で1つの卵を大切に育てて採卵する方法で行いました。結果的には、これが私の体にとって一番合う採卵方法と分かりました。あらゆる方法の中から、なぜこの選択をすることになったのかを解説したいと思います。
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多嚢胞性卵巣は誘発剤が効果的に反応する範囲が狭い?
私の1度目の採卵は、クロミッドという排卵誘発剤と卵の成長を促す注射を組み合わせ、強く誘発を促し最大限卵を採取するという方法でした。
12個も卵を採りましたが、結果的に異常受精が多く、胚盤胞となったのは1個だけという寂しい結果でした。
多嚢胞性卵巣の私は、卵が多すぎるとそれぞれの育つ環境が窮屈になり、質が低下するのではないかという見解でした。
また、その方法では、術後に卵巣過剰刺激症候群のような症状に陥って動けなくなったりと、身的負担が大きかったです。
逆に、2度目の採卵は、誘発剤を使わない完全自然周期で主席卵胞になった卵を1つ採卵しましたが、変性卵子しか採れませんでした。
多嚢胞性卵巣の場合、ネックレスサインと呼ばれる特徴が見られ、毎月卵胞はたくさん現れるのですが、主席卵胞が決まるまでは、同じような大きさの卵胞が卵巣に並んでなかなか成長せず、環境が窮屈になり質が低下しがちになるようです。
誘発剤には卵子の成熟を助ける働きがありますが、多嚢胞性卵巣の方は誘発剤が効果的に反応する範囲が狭いと言われています。
自然にしていても成熟がうまくいかない、少し強くすると反応が良すぎて質が悪くなるということがあるようです。
私が不妊治療を克服するには、まず自分に一番合う誘発方法を探すことが必要になってきます。
というわけで、3度目の採卵は、これまでと誘発の方法を変えて挑戦することになりました。
過去の採卵については、下記の記事で紹介しています。
妊娠率や出産率が高い誘発剤は?
卵子の質を良くするには、誘発剤を使う方法以外にも、様々な治療法があります。
医師によると、WHOの分類では、私のような症状は無排卵性不妊(WHOグループⅡ無排卵)に該当するそうです。
私は卵胞が育っているし排卵はしているのにどうして無排卵なの?と思いましたが、変性卵子しか出てこないのは無排卵と同じということのようです。(ちょっとショック…)
英国のNICEガイダンス(2013年)によれば、
7組の男女に1組の割合で不妊がみられ、その4分の1が排卵障害に起因する。無排卵性不妊の多くが性腺刺激正常無排卵(WHOグループⅡ無排卵)で、ほとんどが多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)によって引き起こされる。
とされています。
そして、
無排卵性不妊の1次治療には「レトロゾール」が最良、ほかの治療に比べ生児出産率が高く、妊娠率や排卵誘発率も良好で、多胎妊娠率は低い
とオーストラリア・アデレード大学のRui Wang氏らの検討で明らかになっています。(BMJ誌2017年1月31日号に掲載)
上記の研究グループは、2016年現在医学データーベースに登録されていた関連文献を検索しました。その中から、1966年~2015年に発表された57試験(56論文)に参加した8,082人の無排卵女性(WHOグループⅡ)の1次治療として使われた8つの排卵誘発治療を比較し、それぞれの排卵誘発率、妊娠率、生児出産率、多胎妊娠率を割り出しました。
8つの治療とは、クロミフェン、レトロゾール、メトホルミン、クロミフェン+メトホルミン、タモキシフェン、ゴナドトロピン製剤、腹腔鏡下卵巣多孔術、プラセボ/無治療を対象にしています。
その結果、「レトロゾール」は、排卵誘発率は2位、妊娠率は3位ではあるののの、生児出産率1位、多胎妊娠6位と、出産に至る確率が最も優れ、多胎妊娠のリスクもかなり低いことが分かりました。
「レトロゾール」は、日本では乳がんの治療薬としては保険適用で処方されていますが、不妊治療はまだ目的外使用となり保険適用外になる薬で、服用すると費用が高くなります。
一方、私が使っている「クロミッド」は5日分までは保険適用の排卵誘発剤で安価です。
この2つの薬は、正反対の作用を持ちます。
「クロミッド(クロミフェン)」が脳へ直接働きかけて、卵胞刺激ホルモンの分泌を増やし卵胞の成長を促すのに対し、「レトロゾール」は逆にホルモンの分泌を抑制することで脳は卵巣がサボっている!と勘違いし、自発的にホルモンを出すように促す作用があります。
排卵誘発の面では、「クロミッド」は即効性があり効き目も強いですが、「レトロゾール」は4カ月以上服用を続けないと効果が出ないと言われています。しかし、より自然に近い治療ができるのは「レトロゾール」です。
諸外国では多嚢胞性卵巣の患者にはまず「レトロゾール」が処方されるそうです。
日本はまだレトロゾールの効果が証明されていないと慎重で、世界の常識から遅れているようです。
ちなみに、その研究で妊娠率が一番高かったのはクロミフェン+メトホルミンの使用ですが、その場合の生児出産率は3位だったと記載されています。
日本では多嚢胞性卵巣の患者が体外受精で排卵誘発剤を使用する場合は、「クロミッド(クロミフェン)」を使用する場合が多いと思います。安価で誘発の即効性があるためです。
クロミッドは自然妊娠で使用すると多胎妊娠のリスクがありますが、体外受精の場合は複数採卵して1個ずつ子宮に戻せばいいため、複数の卵が採れても多胎のリスクはありません。
私が通院しているクリニックでは、多嚢胞性卵巣の患者が体外受精を初めて行うときは第一選択薬を「クロミッド」にするようですが、それでうまくいかない場合は、患者の希望によって使い分けています。
クロミッドが合わない方や、できるだけ自然に良い卵を排卵させたい方、AMHが低く複数の卵を採卵できない方には「レトロゾール」が勧められます。
私の場合、できるだけ早く妊娠したい、費用もできるだけ抑えたいということで、主治医と相談した結果、今回は「レトロゾール」ではなく、「クロミッド」半錠を服用し注射なしの誘発方法を試してみることになりました。
ちなみに、私の最初の採卵は「クロミッド」丸々1錠を服用し、注射を併用していました。
今回の方法でもうまくいかない場合は、次回「レトロゾール」に変更するということになりました。
クロミッド半錠で1つの卵を大切に育てるとは
いつもは生理が始まると、クリニックに電話をして体外受精スケジュールに入りますが、今回は違いました。
完全自然周期で採卵して変性卵子しか採れず体外受精がキャンセルになった直後だったため、生理を起こしてすぐ(連続した周期で)体外受精スケジュールに進めることになりました。
完全自然周期の採卵後は、黄体ホルモンの薬を2週間飲んで生理を起こすことになっていました。
そのため、生理がはじまる3日前に子宮や卵巣の経過観察で通院し、問題がないということで、その際、生理3日目から服用するクロミッドを処方してもらいました。
生理3日目からクロミッドを自分で半分に割って半錠服用を開始しました。
クロミッドは1錠でも半錠でも5日分までしか保険適用にならないため、コストをおさえるためには1錠を5日分処方してもらい、自分で半分に割って服用します。病院や薬局で半錠にして処方すると半錠の5日分(計2.5錠分)しか保険適用にならないためです。
8日目と12日目に卵胞の成長をエコーで確認し、結果的にクロミッド半錠の服用は10日間続きました。
エコーの画像を見ると、卵巣にたくさんの卵胞が見えており、クロミッド半錠でもたくさん卵胞が出てきているなーと思っていましたが、主席卵胞が大きくなると日に日に数が淘汰されていきました。
15日目のエコーでは、主席卵胞が丸々とすくすく育っていました!ゆるい誘発で1つの卵を大切に育てるということの意味がここでやっと分かりました。この日は、まだ採卵するには卵胞の大きさが十分ではなく、もう少し成長を待つことになりました。
17日目のエコーでは、主席卵胞が23mmに成長しており、血液検査も行い、採卵日が2日後に決定しました。
その日の夜は、排卵を起こすマーカーとなる点鼻薬ブセレキュアを両鼻に1回噴射しました。これはhCGの注射と同じく約36時間後に排卵を起こす薬です。
hCG注射のときは夜に病院へ行き、看護師に打ってもらわないといけませんでしたが、点鼻薬の場合は自宅で自分で噴射すれば良いので負担軽減になりました。(ブレセキュアを買うのに7,000円かかりましたけどね。)
また、予定より早く排卵しないように、2日分のボルタレン坐薬が処方されました。
この日私に発熱はありませんでしたが、解熱鎮痛剤は排卵を抑える副作用があり、その作用を利用して体外受精前の排卵予防に使っているそうです。
こんな形で解熱鎮痛薬を使うこともあるんですね!
(逆に言うと、タイミング法など自然妊娠を期待しても、排卵日の前に解熱鎮痛剤を服用していると排卵が起きにくいということですよね。)
私は点鼻薬をした日の夜と、翌日の夜にボルタレン坐薬を自分でお尻に入れて、採卵に臨みました。
かかった費用の詳細は、下記の記事をご覧ください。
たった1つの採卵で体外受精クリアなるか
採卵の日は朝8時に病院に行かなければなりませんでした。(通常の開院時間よりも1時間早い!)
採卵は3度目で、場数を踏んだだけあり準備は慣れてきましたが、例によって朝に浣腸を入れて便を整えたり、出勤前の夫にカップへおたまじゃくしを注いでもらったりと、朝はバタバタしました。
カップの運び方については下記の記事をご参照ください。
採卵当日は主席卵胞が丸々と立派に育っており、無事に卵子1つを採ることができました!
相変わらず、麻酔も痛み止めもなしの採卵手術ですが、1個だけなので我慢できる痛みでした。
夫の精子の成績については、下記の記事で紹介しています。
術後のリカバリーも早く、出されたパンを食べて、hCGの注射を打って、止血のガーゼを取り出したらスッと歩いて帰ることができました。
今回は誘発剤を使っていましたが、ゆるい誘発で採卵数が1個だったため、卵巣が腫れる心配がなく、胚盤胞の移植は採卵と同じ周期に受けることができます。いわゆる、新鮮胚移植です。
3日目に戻すか5日目に戻すか選択できましたが、私はしっかり胚盤胞になったことを確認して卵を戻し安心したいと思い、5日目を希望していました。
ということで、もし胚盤胞まで成長した場合は5日後に移植するため、この日からデュファストンによる黄体ホルモンの補充も開始しました。(妊娠判定日まで続きました。)
翌日、電話で体外受精の結果を聞くと、今回の卵子は変性しておらず、体外受精もうまくいっていました!
いや、でも、胚盤胞に成長するまで安心はできないと思い、それから毎日ドキドキしながら過ごしました。
胚盤胞になっているか?合格発表は移植当日
今回は移植当日の朝に病院に電話し、胚盤胞になっていればすぐ病院へ行き、胚盤胞まで成長していなかった場合は残念ながらそこでキャンセルとなります。
まるで天国と地獄の分かれ道です!!
会社には移植をする前提で有給休暇を申請して、応援もされているのに、もしキャンセルになったらズル休みのようで憂鬱さが倍増しそうです。
しかしながら、キャンセルのショックを引きずると仕事も手に着かないと思うので、申し訳ないですが、どっちにしても休ませて頂きますという気持ちでした。
移植当日は、また浣腸で便通を整え、すぐに病院へ行ける準備をし、緊張しながら朝の9時に病院へ電話しました。
すると「胚盤胞になりかけているので11時に来てください。」と言われました。
良かった―!!!
移植は今回で2回目で、前回の経験から痛くないのは分かっていたため、わくわくしながら病院へ行きました。
受精卵はまだ初期胚でグレードがつく前の状態でしたが、翌日に移植すると孵化してしまいタイミングが遅くなるかもしれないため、少し早いかもしれないけれど5日目に移植するという判断になったようです。
移植の時間は、一般的には排卵から約120時間後に着床するということですが、今回は結果的に123時間後に移植しました。
胚盤胞は凍結していない、培養ホヤホヤのフレッシュな状態なので、アシステッドハッチングをせず子宮に戻しました。
医師が「たった1つの卵で胚盤胞まで成長するなんて、こんなにうまくいくことは珍しい。」と驚いていたくらいです。
私もこれまで医師から1個の卵では順調に胚盤胞まで成長する確率は低いなど、期待を薄めるようなことを散々聞かされていたので驚きでした。
胚盤胞になる成功率や、コスト、体への負担などの観点から考えて、私の体にはこのゆるめの誘発がすごく合ってたのだと分かりました。
ちなみに、私はその後、クロミッド半錠に注射を併用して3つの卵子を採卵したことがありますが、結果は悪くなりました。
その話は下記の記事で紹介しています。
話は戻りまして、移植日から妊娠判定日までは、デュファストンに加え、ワンクリノンという膣坐薬での黄体ホルモン補充も続けることになりました。
今回は良い卵が採れたと医師からお墨付きを頂いていたため、妊娠への期待も高まります。
移植の日は、クリニックから移植直前の胚盤胞の写真をもらいました。
前回の流産で名前までつけていたのに天国にいってしまった卵がいたため、この卵が我が家の第二子か〜と思いました(笑)
移植から8日後が、お楽しみの妊娠判定日です。
お楽しみから一転、そこでまた地獄に突き落とされることになるのですが、下記の記事へ続きます。