着床障害の検査を受けることになった私は、ホルモン補充周期に突入しました。検査ではどんなことが分かるのか?ホルモン補充周期とはどういうことなのか?など、ERA検査を受けるために必要だったことや、大変だったことを含めて、実体験から分かりやすくお伝えします。
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ERA検査が普及しつつある背景
私が受けることになったERA検査(子宮内膜着床能検査)は、スペインに本社があるigenomix社が特許を持っている技術です。
子宮内膜の組織からRNAを抽出し、遺伝子の配列を分析して、子宮内膜が着床に最適な時間か、または何時間ズレているのかを知ることができます。
遺伝子検査自体は、私も大学生の時にしていたことがあるくらい現代では身近なものですが、この特許のすごさは、世界中から集められた不妊患者のデータを元に独自に開発したアルゴリズムにあります。
そのアルゴリズムで、子宮内膜受容に関する248個の遺伝子発現を分析し、子宮内膜の着床の窓を受容時期(Receptive)と非受容時期(Non-Receptive)に分類してくれます。
お金を払えば、採取した検体から、EMMA検査(子宮内マイクロバイオーム検査)と、ALICE検査(感染性慢性子宮内膜炎検査)をしてもらうことができます。
EMMA検査は、子宮内の常在菌(病原菌を含む)を調べ、着床妊娠に大切な乳酸菌の割合を調べる検査です。
また、ALICE検査は、子宮内における慢性子宮内膜炎に関与していると思われる菌の有無と割合を調べる検査です。
いずれも遺伝子検査で菌の有無を特定します。
スペインにあるigenomix社は、日本で不妊治療のニーズが高いことから、2017年3月に東京に日本法人を設立し、日本に上陸しました。
それまでは、日本でこの検査を受けられる施設数は少なかったようです。
当時検査を実施していた施設では、子宮内膜の組織を採取すると、検査のために国際便でスペインへ検体を送らなければならず、費用が30万円以上かかり、結果が分かるまでの時間も長かったようです。
しかし、2017年から東京に検体を送れば検査をしてもらえるようになり、費用がおよそ半額になり、2〜3週間で結果が分かるようになりました。
ERA検査で着床の窓(着床に適した時間)のズレが分かることによって、妊娠が難しかった不妊治療患者が妊娠に至るケースも多々あり、日本国内で導入する不妊治療クリニックが年々増えてきています。
国内でERA検査を受けられる施設は、アイジェノミクス・ジャパンのHPに掲載されていました。(が、その後ページがリニューアルされて見当たらなくなったのでリンクは削除しました。)
HPに掲載されていた時は、まだ地方では実施している施設ゼロという県もありました。(その後増えていたら良いのですが・・・)
不妊治療専門のクリニック自体、都市部に集中しているため、そこそこ人口の多い県に住んでいても、郊外の場合は実施施設が近くにないことが多いです。
不妊治療をするために、東京や大阪のクリニックへ遠征するという方がいるのはそんな事情もあるのだと思いますが、仕事ができなくなったり、お金もかかり、辛すぎる現実です。
私の通っているクリニックでは、ERA検査+EMMA検査+ALICE検査の3つを同時に検査する場合、15万円でした。(これに消費税8%が付いて、実際には16万2千円でした。)
ご参考まで、クリニックでもらった見積書では、ERA検査のみ実施する場合などの料金も載っていましたので紹介します。
ERA検査のみ1回目は12万円、ERA検査のみ2回目は10万円でした。
また、EMMA検査+ALICE検査の2つを同時にすると6万円、ALICE検査のみは4万円でした。
いずれにしても保険適用外の自費診療になるため、クリニックによって費用は異なりますが、不妊治療専門クリニックにおいてはERA検査が普及しつつあり、特に都市部では競合がいるため今は大幅に変わらないのではと思います。
正直、16万円は高く感じましたが、検体を採取する管にも特許があったり、ERA検査のアルゴリズムの開発に10年もかかったということなので、この価格で受けられただけでも、令和の時代に生きていて良かったと思いました。
私がもし江戸時代など古い時代に生きていれば、子どもができないというだけで離婚されていたかもしれませんし、昭和の時代ですら、原因不明の不妊症としてモヤモヤしながら人生を終えていたと思います。
実際には、ERA検査+EMMA検査+ALICE検査の検査費用以外にも、ホルモン補充にかかった金額もありますので、総費用は下記の記事で詳しくご紹介しています。
▼ERA検査、EMMA検査、ALICE検査にかかった費用を振り返り
ERA検査、EMMA検査、ALICE検査の検査対象者
ERA検査は、体外受精や顕微鏡受精をする前提で行われる検査のため、タイミング法や人工授精での妊娠を希望する方は医師から勧めてもらえないと思います。
しかし、EMMA検査やALICE検査は、タイミング法や人工授精での妊娠を希望する方も受けることができます。タイミング法や人工授精で妊娠した実績があり、流産を繰り返す場合は念のためこれらの検査を勧められることがあります。
igenomix社のホームページではERA検査の検査対象者は下記にように記載されていました。
(その後ページのリニューアルで見当たらなくなりリンクは削除しました)
- 反復性胚着床障害、または高齢で健康な受精卵が極めて貴重な患者様
・良好胚を移植しているには関わらず
・2回以上の体外受精不成功
・提供卵子で1回以上の体外受精不成功 - 子宮内膜が特に問題なさそうであるにも関わらず移植しても着床に至らない患者様
・子宮内膜の厚みが 6.5 mm以上あり
・子宮側に特に問題がみられない
私は主治医から「通常は排卵から120時間で着床すると言われているが、体外受精で良好胚を2回以上移植したのに着床しなかったり、妊娠反応をかすったのに初期の流産で妊娠が継続しなかった場合は、着床の時間がズレている場合がある。」と説明を受け、ERA検査を勧められました。
また、子宮内フローラ(細菌)が9割以上乳酸菌で占められている環境が妊娠には向いているそうで、ERA検査と同時にEMMA検査を受けることも勧められ、乳酸菌の割合がどれくらいか、病原菌がいないかを調べてもらうことにしました。
そして、ALICE検査では、通常の生理では剥がれ落ちない層に感染症などの不具合がないか、それらの原因菌の有無を調べることができるため、合わせて検査してもらうことにしました。
ERA検査を受けるには準備期間が必要
EMMA検査やALICE検査だけ受ける場合は、生理中でなければ検体を採取する時期の縛りは特別ないと思います。
しかし、ERA検査を実施するためには、実際の胚盤胞移植スケジュールに合わせてホルモンを調整し、移植をするタイミングで子宮内膜を採取しなければなりません。
もし、ERA検査をした時と、実際の移植スケジュールで使う薬が違ったり、ホルモンの調整がズレてしまうと、条件が異なってしまうため、せっかく検査しても無駄になってしまいます。
ERA検査のために採取した検体は、EMMA検査やALICE検査にも使えるので、私はERA検査にあわせて子宮内膜の組織を採取することになりました。
これまで私は、女性ホルモンの補充を行って排卵を止める、ホルモン補充周期(カウフマン療法)という方法で体外受精に臨んだことはありませんでしたが、もしERA検査の結果、着床できる時間がズレていることが分かった場合は、厳格な時間コントロールが必要になるため、私の通っているクリニックではホルモン補充周期で胚盤胞を移植することになっています。
そのため、生理がきたら、ERA検査のためのホルモン補充周期に入ることになりました。
生理4日目から女性ホルモンを補充したり、途中から仮排卵のために黄体ホルモンの補充をしたりと、子宮内膜の組織採取まで準備期間が必要でした。
実際に子宮内膜の組織を採取したあとも、黄体ホルモンの補充があったため、結局この検査をした周期は、1周期丸々、何かしらのホルモンを補充していました。
ホルモン補充周期で大変だったこと
私は生理4日目に通院し、その日からエストラーナテープを下腹部に貼り、女性ホルモンの補充を開始しました。
エストラーナテープは、ERA検査に向けて排卵を止めるために使いましたが、本来エストラーナテープはこのためにあるものではないため、目的外使用になり費用は保険適用外でした。
同じテープを2日間下腹部に貼りっぱなしにすることになったのですが、1日目は貼ったままお風呂に入ることになるため、剥がれないか心配でした。
ピッタリ貼っているつもりでも、かがんだりすると、お腹のお肉にしわが寄り、テープのシワのすき間からシャワーのお湯が入り込んでしまったこともあります。
さすがに2日間貼っているとかゆくなるため、貼りかえるときは、同じ場所にならないよう少しずらして貼ります。
エストラーナテープを貼る期間は、生理4日目から18日目(ERA検査の子宮内膜採取日)まで計15日間続きました。
貼り方は毎日試行錯誤でしたが、貼り慣れた頃には終わりかけでした(笑)
途中、生理開始日から数えて11日目に診察に行き、エコー検査を受けました。
いつもなら卵巣に卵胞がいくつか見える時期ですが、全く卵胞が育っていなかったです!
女性ホルモンを補充して排卵を止めるということの意味がここでやっと分かりました。
排卵を止めるというより、卵胞が育たないないので排卵することがありません。
その日は、ワンクリノンという黄体ホルモンの膣坐薬が処方されました。
この膣座薬は2日後の、生理開始から数えて13日目から入れることになりました。
ワンクリノンを最初に入れた日時が、仮排卵日になります。
通常は排卵から120時間で着床するはずですので、ワンクリノンを最初に入れた時間から120時間後(5日後)に子宮内膜の組織を採取することになりました。
なんと言っても、この時間管理がすごく厳格でした!!
移植時間から逆算して、膣坐薬は毎日午前11時ぴったりに入れるようにと命ぜられました。それが6日間続きました。
こんなの、仕事をしながらだと絶対に無理です!!
午前11時だと、会議をしていることも多かったですし、もし自分が議事録担当であれば、11時ピッタリにトイレへ行って膣坐薬を入れるなんて自由はききません。
ちょうど休職中だったため、毎日携帯のアラームをセットして、家のトイレで忘れずに入れることができましたが、それでも緊張しました。
なぜなら、もし膣坐薬を入れる時間を間違えたり、ズレてしまったら、病院に電話して指示を仰ぐように言われていたからです。
このあとERA検査が無事終わっても、次の体外受精のあと胚盤胞移植をすることになれば、またこの厳格な時間管理でホルモンを補充しなければならないと考えると、仕事をしたくても移植予定がある限り、復職は難しいのではないかと思えてきました…。
痛かった子宮内膜の組織採取
生理開始日から18日目にあたる日、午前11時に子宮内膜の組織を採取するためクリニックへ行きました。
今回は、手術室ではなく、外来の診察台で行われました。
麻酔も痛み止めもなしです。
採取前に、主治医が採取に使う外国製の細長い棒を持って来て見せてくれました。
30~40cmはあろうかと思われるピペールで、管の中に入っている棒を手前に引っ張ると管内が陰圧になって組織が吸い込まれるのだそうです。
単純そうに見えましたが、このピペールに特許があり、お値段は高いようです。
こんなに長いのが体に入るのか…すごい奥から採取するんだな…と、納得半分、恐怖半分でした。
外来の診察台は、医師と自分との間がカーテンで仕切られているので、声は聞こえますが、手元で何が行われているかよく分かりません。
普段はカーテンよりこっちに看護師が来ることはないのですが、施術が始まると、看護師がドアをトントン!パーン!と開けて飛んで来て、私の腕をさすりに来てくれました。
採取は子宮頸がんの検査のように一瞬こすって終わるのかな?と軽い気持ちで臨んでいたのですが、それより格段にハードでした。
けっこう痛みの耐久時間が長く、なかなかの修行でした…。
看護師にさすられて、もう少しですよ!と励まされても、痛いのは痛いです(泣)
よくドラマなどで見る、出産シーンと同じような感じでした。
通常の生理では剥がれ落ちない層を検査するのだから、そりゃこれまで感じたことのない痛みがあるはずだよなと思いました。
採取が終わると、医師が液に入った組織を「こんなけ取りましたからね。」と見せてくれました。
施術中、医師と看護師が「これでいける?足りるよね?」とカーテンの向こう側で会話しているのが聞こえていたため、もう余計な痛い目には遭いたくない、無事に検査へ行ってくれよと願うばかりでした。
抗生物質をもらい、会計を済ませて、バスに乗ってトボトボと帰りました。
終わってみると、痛みを忘れるなーと思いました。
出産経験がある方に比べればまだひよっ子ですが、こうしてまた1つ痛みの経験値は上がりました。
ERA検査、EMMA検査、ALICE検査の結果や、なぜか検査に出されていた子宮内膜日付診については、次の記事をご覧ください。
▼ERA検査、EMMA検査、ALICE検査、子宮内膜日付診の結果