着床障害の検査を勧められた私は、不妊治療クリニックで子宮内膜の組織を採取し、igenomix社によるERA検査、EMMA検査、ALICE検査を受けました。また、一緒に採取した組織をクリニックは別の検査機関にも送っており、子宮内膜日付診が行われていました。それらの結果から何が分かり、どのような治療方針で進めることになったかをお伝えします。
ERA検査の結果、着床の窓がズレていた
前回の記事では、子宮内膜の組織を採取したことをお伝えしていました。
▼ERA検査のためにホルモン補充周期で子宮内膜の組織を採取した感想
EMMA検査とALICE検査は、2週間ほどで検査結果が出るようですが、ERA検査は3週間ほどかかると言われていました。
そのため、子宮内膜の組織を採取してから、黄体ホルモンの補充10日間を経て、2日後に生理を起こし、生理が終わるのを待ってからクリニックへ結果を聞きに行きました。
3つの検査結果は、全て英語で記載されていました!さすが、グローバルな検査会社です。
今回のERA検査(子宮内膜着床能検査)では、仮排卵から120時間後(一般的な着床時間)の子宮内膜の組織を分析してもらいましたが、そのタイミングでは既に私の着床の窓は閉じていることが示されていました!
どういうことかと申しますと、仮排卵から120時間では、私の子宮の着床に適したタイミングが終わってしまっているのです。
具体的には、排卵から108時間±3時間であれば、私の着床の窓は開いているだろうという結果でした。
120時間-108時間=12時間なので、半日ズレているという結果です。
夫は「たった12時間の違い?」と首をかしげていましたが、そりゃ今までの体外受精で妊娠しないわけです。
先日受けた2回目の体外受精では、排卵から123時間後に移植をしていました。
例えるなら、「はい!今月は着床できる時間終わりました〜!閉店ガラガラ〜!」となっているところに、貴重な胚盤胞を戻していたわけです。
これまでは受精卵が胚盤胞になる時間も、子宮が着床できる時間も、ざっくり5日目と思っていましたが、それは一般論で、個人差があるのだなと分かりました。
ERA検査結果の統計上では、私のように120時間では既に着床に適した時間が終わっている方の方が多いようですが、逆に120時間でもまだ着床に適した時間には早いという結果が出る方もいらっしゃるようです。
ERA検査は、着床に適した時間のズレが120時間±48時間までの場合は1回の検査で適した時間を示すことができるようです。
まれに、±48時間(丸2日)以上、着床に適した時間がズレている方がいるようで、その場は2回目のERA検査を受けると、詳しい時間が分かるそうです。
実際、私の通うクリニックでも、2日以上ズレていたため、2度目のERA検査で特定した方がいたそうです。
そんなことを聞くと、私は1回で分かっただけ良かったほうなんだと思います。
子宮内膜の組織採取が痛いと分かってしまった段階で、あれをもう1度しないといけないなんて言われたら、絶望感と恐怖でまた辛いだろうな…とお察しします。
ちなみに、私が通うクリニックではこれまで30人がERA検査を受け、皆さん着床のズレが判明し、うち16人が既に凍結胚盤胞を移植し、あとの14名はまだ移植準備中ということでした。
移植された16人の皆さんは、医師いわく私のように妊娠がなかなか難しい患者さんだったそうですが、14人は妊娠され、残念ながら2人は妊娠に至らなかったようです。
ERA検査の結果を反映しても妊娠しない場合は、まだ他にも原因があることが考えられるということでした。
主治医に、「ERA検査で着床のズレが判明した場合は、自然妊娠は不可能ということですか?もうホルモン補充周期以外では妊娠できないですか?」と質問してみました。
医師は「絶対に自然妊娠できないとは断言できませんが、自然妊娠はかなり難しいでしょう。厳密な時間コントロールが必要なので、次回はホルモン補充周期でやりましょう。」とおっしゃっていました。
私はこれまでまだ知らない不妊の原因があるかもとモヤモヤしていましたが、今回、遺伝子検査レベルで着床に適した時間がズレていることが判明して、ややスッキリしました。
私のご先祖様たちは自然妊娠で子どもを産んできたのに、どうして私がこんな体になっているのか未だに謎であり、親には悲しまれましたが。
逆に、遺伝子検査ということで、自分の意志や生活習慣の改善などで簡単に書き換えられるものでもないため、自分の努力不足ではないと思えるようになりました。
自分がそういう体質なんだと理解でき、治療の余地も出てきたため、本当に検査を受けることができて良かったです。
EMMA検査の結果、ラクトフェリンを服用することに
続いて、EMMA検査(子宮内マイクロバイオーム検査)の結果についてお伝えします。
クリニックで、検査の事前説明を受けたときに、EMMA検査などの検査結果サンプルを見せてもらったことがあるのですが、抗生物質を服用していると子宮内フローラが全くない、乳酸菌すらいないという人もいるそうです。
検査の結果、私の子宮内フローラ(細菌)は乳酸菌が86.82%を占めていることが分かりました。
幸いにも、特に問題となる菌は検出されませんでしたので、残り13.18%の菌は、子宮内にいつもいる、健康には害のない常在菌なのかな?と思われます。
しかし、妊娠に適した子宮の環境というのは、乳酸菌が90%以上を占める環境とされているため、私はちょっと足りていませんでした…。
そのため、子宮内フローラの環境を良くしなければ次に進めなくなりました。
このあともし体外受精をしてうまく胚盤胞が作れても、すぐには胚盤胞移植させてもらえません。
ERA検査もそうでしたが、何か引っかかった場合は、英語の検査結果に改善策の提案が書かれています。
私のEMMA検査結果の提案には「子宮内膜の乳酸菌の割合を増加させる、膣の乳酸菌と善玉菌のトリートメント(処置)をお勧めする。」というようなことが書いてありました。
その処置と言いましょうか、治療というのは、ラクトフェリンのサプリメントを3ヶ月以上服用し続けるという方法です。
治療と言うと医療行為っぽく聞こえるので補足しますと、ラクトフェリンは医薬品ではなく食品扱いのため、腸内環境を良くするのにヨーグルトを食べ続けるようなものです。
実際に、ラクトフェリンのサプリメントを3ヶ月以上服用し続けると、子宮内の乳酸菌の割合が改善したという研究結果があり、まずはクリニック指定のラクトフェリンサプリを3ヶ月服用していくことになりました。
実は私、EMMA検査を受ける前に1ヶ月間、クリニック指定ではない、とあるメーカーが出しているラクトフェリンサプリを服用し、ドーピングして検査を受けていたのですが、このような結果だったのです。
元々、医師からは「不妊治療をしている女性はEMMA検査で引っかかる人が多い、ラクトフェリンは3ヶ月以上飲まないと効果が出ないと。」と言われていたため、1ヶ月では効果がないだろうと分かっていましたが、本当に1ヶ月ではダメでした(笑)
逆に、ラクトフェリンを全く飲んでいなかったらもっと乳酸菌の割合が悪かったかもしれませんが、実際の効果は飲む前と飲んだ後の2回検査をしないと測れないので、そこまで分かりません。
ラクトフェリンを3か月以上服用した後、本当に自分の子宮内フローラが改善しているかどうか気にはなりますが、もう検査で余計なお金を使いたくないので、素直に3ヶ月以上服用してからの移植を目指すことにしました。
なぜラクトフェリンが子宮内フローラの改善に役立つのか、リケジョ的には気になったので、自分なり調べました。
ラクトフェリンは鉄と結びつきやすい構造をしています。
子宮内には経血があるため、鉄が好きな好鉄菌がいる場合があります。
ラクトフェリンが先に鉄と結びつくことで、好鉄菌は飢餓状態になり、乳酸菌の割合が増えるということなのかなと思います。
ただし、ラクトフェリンはそのまま服用すると胃液で分解されてしまうため、胃で消化されないようにコーティングされているサプリメントが主流です。
ラクトフェリンのサプリメントは色んな会社から出ていますが、それらは宣伝文句に、腸まで届くと書いてあったりします。
クリニック指定のラクトフェリンは、BABY&MEのラクトフェリンでした。
これにしているのは、日本医科大学の子宮内フローラ改善の研究論文の中で使用されたサプリメントで、唯一エビデンスがあるからだそうです。
私がドーピングしていた、とある会社のラクトフェリンも、一粒当たりのラクトフェリン含有量はBABY&MEのラクトフェリンと同じで、1日に服用する量も同じだったのですが、ここは素直にクリニック指定のものを服用することにしました。
ラクトフェリンのサプリを販売しているメーカーはいくつもありますが、実は元を辿れば同じ会社が作っていたりします。
ネットで検索すればすぐ分かりますが、ラクトフェリンサプリのオリジナル商品の開発や、OEM生産をしてくれる会社があるのです。
それを知っていると、どのラクトフェリンも効果はほぼ同じじゃないの?と思ってしまうのですが、医師としては根拠がないと困るので、論文で効果が実証されてるものを患者にお勧めしているわけです。
BABY&MEの販売者は、株式会社パートナーズという会社で、不妊治療の改善にとても熱心な方がされているそうです。
医師が、その方が翻訳した著書「妊娠しやすい食生活」がおススメと教えてくれました。
今は廃版になっており、新品では入手困難ですが、Amazonでは中古で販売されていました。
主治医は「読みたかったら貸してあげるよ。」と言ってくれましたが(笑)
気になる方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
ALICE検査の結果
ALICE検査(感染性慢性子宮内膜炎検査)では、幸い、何も問題は見つかりませんでした。
10種類の菌の名前が書いてありましたが、いずれもNo Detectedと表記され、検出されなかったようです。
とりあえず、ホッ。
子宮内膜日付診の結果
検査結果をもらうまで全く聞かされていなかったのですが、私が通う不妊治療クリニックでは、EAR検査を受けると、採取した子宮内膜の組織を、別の検査機関にも送って、子宮内膜日付診と悪性の有無の検査を依頼していました。
この検査の料金は、ERA検査などの請求書には記載がなく、クリニックのサービスなのか?と思っていましたが、よくよく見返すと、当日ERA検査と別に病理検査の診断料が取られていました…。
料金については下記の記事で詳しくご紹介しています。
▼ERA検査、EMMA検査、ALICE検査にかかった費用を振り返り
検査結果報告書を見ると、病理検査をする検査会社の名前になっており、顕微鏡を使って人間の目で細胞を観察するという、遺伝子検査に比べれば原始的というか、旧来の検査方法でした。
子宮内膜日付診は、見た感じ排卵後何日目の組織の様子かを判断する検査で、私の結果はPOD(排卵後)2日目相当の所見でした。
実際には、仮排卵日から5日目に採取していますし、ERA検査の結果からすると着床に適した時期を逃していたのでむしろ見た目は5日以上たっててもおかしくないハズなのですが…。
主治医は、「念のために検査に出していたんですけどね、ERA検査のほうが正確なので、こっちは気にする必要はない。」とおっしゃっていました。
なら、なぜ検査に出したんだー?と思いましたが、人間の目で見る検査では着床に適した時期かどうかまで分からないということが良く分かりました。
ちょっと前まで、こんな検査が主流だったと思うとゾッとします。
もし、この結果を信じて、5日目に採取したけれど2日目相当なら、+3日の8日目に移植しようか!なんてことになったら、一生妊娠するわけないですし、お金と時間がどれだけ無駄になるやら。
でも、顕微鏡の検査では、ERA検査では分からない、内膜腺にどれくらい核下空砲があるかや、空砲のないものには核の偽重層が認められるなど、見た目の様子が分かるという点はあります。
悪性を思わせる所見はありませんでしたと結ばれていたので、一安心です。
子宮頚がんの検査も同じように顕微鏡検査をしていると思いますが、毎年子宮頚がんの検査で何も引っ掛かっていなくても、子宮頚部と子宮内膜とは採取場所が違いますので、何があるか分かりませんもんね。
検査結果から考える、今後の治療方針
これから、ラクトフェリンを3ヶ月以上服用することになりました。
早ければ、3ヶ月後には胚盤胞移植をすることができます。
しかし、現在、私には凍結している胚盤胞がありません。
そこで、移植に向けて、ラクトフェリンを服用している間に凍結胚盤胞を作ることになりました。
少しでも若いうちに卵子を取っておきたいというのもありますが、ERA検査はいくら遺伝子検査と言っても、数年後などブランクが空きすぎたり、太るなど極端に体型が変わると再検査が必要になる場合があるようです。
移植の前後にはホルモン補充をしますし、年齢と共に自分の体が変化したら、薬の効き目も変わってくるかもしれないということなのかなと思っています。
3ヶ月間あれば、すぐに採卵して、もし体外受精が失敗したり、胚盤胞ができなくても、その次の周期にリベンジすることができるので、焦ることもないなと思いました。
ただ、まだ休職中ということで、メンタル面が完全に復活したわけではなく、採卵するか少し迷いました。
でも、体外受精をするとなると、また午前中の通院が続くことになるため、現実問題、休職中のほうが通院しやすいのです。
職場と距離を置いてたことで、少しは精神的にも落ち着いたので、今周期でいったん採卵してみようと決意しました。
私は心療内科の医師にも(事後報告でしたが)了承してもらえ、3度目の体外受精に臨むことにしました。
その体外受精で受精卵ができ、5日の培養に耐えてうまく胚盤胞が作れたら、凍結保存をします。
そして、ERA検査を受けた時のようにホルモン補充をして、仮排卵日時から4.5日目(108時間後)に融解した胚盤胞を子宮に戻すことになります。